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「きいちごプロジェクト」、その名ばかりが先に一人歩きしていた数週間。

ようやく少しずつ、ぼんやりとしていた輪郭に色が差し始めています。


きっかけは、灯油窯の設置の際、ずいぶんお世話になった、陶人社の柴田さん。

みんな大好き柴田さん。

5月中旬、私のアトリエにちょうどいいサイズの棚や作業台を引き取らないかというメッセージが届きました。

北海道の真ん中あたり、赤平で蒲鉾型の倉庫を購入し、一年の歳月をかけて、整備を進めて、やっと整いつつありました。

鉄板一枚で暑さも寒さもダイレクトに受け取りますが、私の「人生」と「好き」を集めた作業場であり、書斎であり、ギャラリーです。


約束の日に「工房きいちご」を訪問すると「棚と作業台を引き取るなら、資材も一緒に」という条件になっていました。

しかし、その量は想像をはるかに超えるものでした。

粘土500kg、釉薬は数十種類、大小様々な石膏型に加え、小道具、大量の衣装ケース、子供用の椅子、椅子、椅子・・・。

中古品として需要のあるものは陶人社が引き取り、そうでないものは、私が引き取ることに・・・。

なんでだよ!

道具や材料は、廃業とともに処分に困る「ゴミ」になるのです。

私はこの資材を丸ごと引き受けることにしました。ワゴン車と軽トラックで、合わせて4回運びました。

最終日は車が沈むほどの重さでした。


新品未開封で比較的状態のいい粘土は白龍窯の出口さんが120kg引き取ってくれました。

なんでだよ!

棚の組み立ては5人がかりで丸2日、空間が整い始め、ようやく少し心も落ち着きました。

今は肥料袋に入った種類の分からないカチカチの粘土を少しずつ再生して使っています。

しかし、冬になれば粘土は凍結し、繰り返せば再生できなくなる。だから、雪が降る前に使い切りたいのです。

廃業する人にとっては不要となった材料かもしれません。でも、それはただの「ゴミ」ではない。

誰かの手によって「宝」になる可能性を秘めています。

どんな粘土でも、誰がどんな想いで触れるかで、その価値は大きく変わるのです。

そう信じて「きいちごプロジェクト」を始めることにしました。


陶芸を始めたとき、きっと誰もがワクワクしていたはずです。

「これができたら、ちょっとカッコいいかも」

そんな気持ちを、私は今も大事にしています。楽しそうに生きる大人の姿は、子どもたちの目にまぶしく映るはずだから。

陶芸は、ただの「モノづくり」ではなく、技術と芸術が融合した伝統文化であり、アートです。


ゴールは2025年11月23日。

この日は、私の両親の結婚記念日。

私の命が繋がるきっかけとなった日に、もう一度、誰かの「創る力」を未来へと繋げたい。

これは単なる在庫整理ではありません。

私は「大人の自由研究」という遊び心を大切にしながら、循環の輪を広げていきたいと考えています。

このプロジェクトが目指すのは、モノづくりの楽しさと、循環する社会の美しさを、未来の子どもたちにも伝えていくことです。

そこには「使い切る」「活かしきる」「分かち合う」という、モノづくりの原点があります。


不要になったものに、もう一度光を当てたい。

しかし、私の力では、それを活かしきれないのです。

この世界を突っ走っているカッコいい陶芸家の手で作品に変えてもらいたいのです。

お一人おひとりの「手」が必要です。

「遺された素材」が宝物になる瞬間を。

ぜひ、あなたもこの「きいちごプロジェクト」にご参加ください。

あなたの手が、その物語を動かす鍵となります。

一緒に、未来に渡せる“何か”を創りましょう。


きいちごプロジェクト実行委員長

石橋美智子


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